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■みどり 95号
●現場を訪ねて
(仮称)グランベリーモールC棟増築工事作業所(首都圏本部)
近隣対策・安全対策に万全の体制
現場環境に合わせて「なにが最善か」を考える


■工事場所 東京都町田市鶴間3-4-1
■工   期 平成17年5月〜平成18年3月
■建 築 主 東京急行電鉄株式会社
■所   長 藤平豊久 


 東急田園都市線南町田駅前に広がるショッピングセンター・グランベリーモールの一角に、お訪ねしたグランベリーモールC棟増築工事の現場がある。この「C」というのは、グランベリーモールの既存棟がAからFまであり、そのC棟の増築工事。「増築工事」というのは、既存施設の駐車スペースとなっていた敷地に建てるため、増築扱いで申請したことからだ。実質的には、既設部とは別棟の新築工事である。いくつもの映画館(全10スクリーン)を中心に飲食店やショップが入る複合的な商業施設となる。
 この南町田の駅前一体に広がるエリアを「モール」と呼んでいることから分かるように、現場周辺は広大な商業スペースで囲まれており、マンションや戸建ての住宅を背景に、小学校、女子大学などへの通学、ショッピングに訪れる人や車で混雑しているところである。そうした立地条件を前提に藤平所長は、着工に際して近隣との関係を重視した。とりわけ工事現場の前を通る道路が小学校の通学路となっていることから、事前に小学校との話し合いを持ち、工事現場への資材の搬入には、誘導員を配置して、しかも「通学時間帯は避ける」。通常時間帯でも「誘導員は配置する」。また、学校が夏休みなど長期休暇になるときも「誘導員の配置は継続する」。重量物の搬入は事前にお伝えする。さらに、周辺は営業中の商業施設であることから、お客様に不便や不快感を与えないよう、この工事全般について学校やご家庭へお知らせする等々、安全対策、近隣対策にできる限りのことを行なっている。 



シネコン棟外観。安全ネットは通常より高くしてある。

安全先行の作業環境の整備
作業工程に三分割システム導入

そんな考え方は、工事そのものについても同様で、様々な安全や工程についての対策が、事前に組み立てられてきた。まず、このシネコン棟の特徴をいくつかあげてみると次のようなことになる。前述のように@建物が通学路や商業施設に接している。A建物は4階建ての中層ではあるが、床面積がおよそ2000坪近くもあり平面的に広い。B映画館が中心であるため、吹き抜けが多い。映画館は全10館1800席になり、うち最大は440席、残りは100席前後。階段式の座席をセットするから、各上映室は2階、3階分を使った複雑なレイアウトになっている。それだけ天井も高く、開口部も多くなる。


[工事概要]
・敷地面積 15,512u
・建築面積 6,478u
・延床面積 20,391u
・構造規模 鉄骨造4階建て
・建物用途 1F/物販・飲食店
        2〜3F/映画館
        4〜RF/駐車場

 そこでとった安全対策は、基本は足場、手すり、ネットなど安全設備の先行設置だ。これは作業員にとっての安全対策であると同時に、周辺への安全対策でもある。つまり高所作業で、もし外部への落下物や飛来があったりすれば、たいへんなことになる。そのため上階でのネットは床から1800の高さを維持した。


吹き抜けが多く、内部足場が欠かせない。
 次に作業動線の確保。場内が広いため、いろいろな機材や大勢の人が入ってくる。そこで「物を置く場所」「人が歩く場所」の区画を明確にしたこと。しかも物を置く場所では、「誰」が「なにを」を必ず表示することにしている。これは勝手に、想定外の物は置かない、置き方に責任を持つ、などを明確にするためだ。
 一方で、作業をスムーズに進行させるために、作業エリアをフロアーごとに「鉄骨組み立て」「躯体」「仕上げ」と三分割したこと。これは、手前から順に仕事を進めることで各種の作業が混在しない「やりやすさ」、次の作業が「順番待ちで時間をロスしない」などのメリットがある。しかし、これを計画どおりに進行するためには、それぞれの作業で、万が一にでも遅れが出ては意味がなくなる。一つの遅れが全体の遅れにつながって、かえって重大事になりかねない。つまり、事前の計画を綿密にし、始まったら絶対に遅れを出さないという職種間の連携、信頼関係が欠かせないことになる。ポイントは「着手日の厳守を徹底する」ことだという。
 以上のことは、吹き抜けが多い内部作業にも効果を発揮している。吹き抜けが多いということは、その部分での天井が高くなるから、内部でも足場を組んだり、高所作業用機器を使用するなどの作業が増えることになる。また開口部が多いということでもあるから、落下防止の対策も欠かせない。そうした際に、作業区画の分割、物を置く場所(たとえば開口部から1メートルは離して置くなどの規則をつくり徹底する)や人が歩く場所の明示は、安全の確保と作業のやりやすい環境を整備することになり、そうした試みをとおして、安全意識の高揚につながった。こうした現場状況に対処するには、従来の経験を踏襲しているだけでは、「十分な対策は立てられない」と藤平所長はいう。「その時々の環境に合わせて、安全対策のあり方を追求することが大事」であること、「なにが最適か、最善の方法はなにかを常に考える姿勢が、本当の安全を実現し、建物の品質を高め、想定した工程消化を達成できる」のだと強調する。


藤平豊久所長

三宅祥夫主任

小林育人職長会会長

職長会の皆さん

屋上は駐車場になる

整頓された場内

充実した職長会活動を展開
職種間の信頼と連携が安全の要

 そこで、こうした藤平所長の基本的な考え方のもと、職長会の皆さんに、職長会活動をお聞きした。まず小林育人会長(句vシ建設)に職長会の取り組みの全体像についてお話いただいた。
小林会長「ここの作業所の特徴的なことは、近隣や第三者との接触が多いこと。周辺が商業施設で、交通量の多い道路と接していることです。ですから、なによりも第三者災害、現在は躯体も建ち上がってきましたから、落下・飛来には十分すぎるほどの注意が欠かせません。幸い、安全設備の先行設置ということで、足場まわり、とりわけネットなどは通常よりも高く設置して、安全な作業環境を確保しています。また内部作業も進行してきて、入場者も多くなってきたり、屋上の駐車場の作業でクレーンなど重機も使いますので、作業の混在・混雑で、事故が起きたりしないように注意しています」
 そうしたことから、現在、職長会が取り組んでいることとして「一斉清掃(毎週金曜日)」「安全パトロール(毎週水曜日)」「場内禁煙とくつろげる詰め所(3ヵ所)の管理」「ゴミの分別の徹底」、そして「整理整頓」「十分な作業内容の打合せ」、「機械操作などにおける有資格表示の徹底」などをあげてくれた。小林会長は職長会を「やることをきちんとやる。形式的な会にはしたくない」と強調する。

 畑一博副会長(泣Aイ・エム・シー)「毎週水曜日の安全パトロールでは、自分の担当以外のところも見てまわることで、全体像が把握できます。ストックヤードの整理整頓ができているか、安全設備に不備はないかなどが重点項目ですが、表示の徹底も重視しています」
 宮畑泰志副会長(竃原産業)「職長会としては健康管理にも気を使います。夏は熱中症対策。氷バケツを置いたり、ミネラルウォーターを用意しました。冬は暖房ですね。それと火元注意。場内禁煙ですから、休憩所ではくつろげるように3ヶ所確保しています」
 井手正弘副会長(叶X本組)「左官という職種柄、外部の高所作業もありますから、安全帯や保護具の着用を徹底しています。作業エリアの三分割システムということもあり、後の人に迷惑をかけないということも、十分な打合せをして徹底しています」

通学時間帯の小学生の誘導
 菅原正栄副会長(滑~野)「内装作業ですが、階高がそれぞれのフロアーで通常より高いですから、内部足場作業が多くなります。その日の作業内容をきちんと打合せ、必要な資材を準備し、使わないものは整頓しておくなどを徹底して、安全でスムーズな進行を心がけています」
 書記の森元順さん(鰍ォんでん)は「電気設備は他作業との連携が欠かせない仕事ですから、毎朝、作業内容を打ち合わせて確認するようにしています。段取りよくやること、けっして焦らないこと、体調管理をしっかりしてカゼをひいたり、二日酔いで迷惑をかけることがないよう、話し合っています」
 そして会計担当の丸山匠さん(東洋熱工業梶jは「空調衛生設備の仕事は、広範囲にわたって他職種とのからみが多く、高所作業車も入ってきますから、安全具の使用を徹底しています。会計としては職長会主催の親睦会など、大事な活動費を管理しています」

落ち葉などが多い季節は、一斉清掃が威力を発揮する

職長会による安全パトロール
●頑張ってます“マイスター”

安全への行き届いた気配りが“いい仕事”につながります

 東急建設鰍ナは、すでにご承知のように平成17年度から新たに優良職長『マイスター制度』を発足させています。この制度は、東急建設の全国の現場で従事する数千人の方々から、技能・人格ともに特に優れた職長を顕彰しようとの試みで、第1回のマイスターに24人が選ばれています。(詳しくは「みどり」93号参照)
 そこで今号では、その優良職長の方から4人のマイスターをお訪ねして、仕事についての考え、リーダーとしての自覚などについてお聞きしました。

〈 土 木 〉

川上 勝利(かわかみ かつとし)さん
山崎建設株式会社(首都圏・鉄道支部)
職種:一般土木工事  職歴:21年


 新入社員時代は仕事をしながら夜は短大に通う生活で、自分の時間がなかなか持てない毎日でしたが、とにかく前へ進んで行こうという気持ちでした。そんな中、ライバルとして頑張ろうと励ましあった仲間がいて、彼と測量工として働いた上恩田区画整理工事の5年間が思い出に残っています。その後、彼は帰らぬ人となりましたが、彼の持ち味だった精神力の強さは見習わなくてはと心がけています。
 先輩から「仕事は段取り八分だ」と教わり、常に段取りと計画を頭に描きながら仕事をすることを心がけてきました。まだまだ一人前とは言えませんが、マイスターに選ばれた以上は、模範的職長として的確な指示と安全管理を行い、元請をはじめ関係する方々に今まで以上に信頼されるよう、いろんな面で勉強をしていくよう努力の毎日です。

高橋 正(たかはし ただし)さん
村井土木株式会社(札幌支部)
職種:土木工事  職歴:22年


 これまで土木の仕事を中心に20年余が立ちましたが、その経験から、仕事を始めるに当たってまず大事なことは、『段取りをしっかりしておく』ことだと思っています。現場の隅々までよく見て、作業の手順を考え、理解しておくと、手際よく進めることができます。そして、それが安全な仕事に直結すると思います。
 思い出に残る仕事といえば、ずっと北海道ですから、札幌の地下鉄工事、札幌近郊の宅地造成工事(北広島、スェーデンヒルズなど)ですね。今やっている農業用水路の工事は、農繁期が終わってから取り掛かるので、秋から翌春にかけた冬の仕事となります。厳寒の雪の季節なので、ますます段取りをきちんとして、安全で品質のいい仕事をしたいと思います。
〈 建 築 〉

碇 宣明(いかり のりあき)さん
梶原鉄筋工業株式会社(首都圏・鉄道支部)
職種:鉄筋工事  経験:17年


 20代の頃は、仕事量をこなすことが“できるやつ”という意識が勝っていました。しかし経験を重ねるうちに、安全を第一に考えることが、結局、効率的な仕事、品質のいい仕事につながるのだと分かってきました。これは仕事を覚えていく中で、行き届かなかったことに目配りができるようになってきたこと、いい仕事とはどんなことなのかが分かってきたこと、つまり、仕事をいろいろな角度から見られるようになったからだと思います。こうした落ち着いた判断は、やはり経験によるものなのだなと感じています。
 このたびマイスターに選ばれたことは、私にとって大変光栄ですし、自分の仕事を評価していただいたことを嬉しく思っています。これを励みに、これからもますます頑張りたいと思います。

山田 伸一(やまだ しんいち)さん
有限会社 伊 興(首都圏・鉄道支部)
職種:型枠工事  経験:35年

 最初の現場は札幌のデパートで、材料を覚えるのに精一杯でした。それから35年、たまプラーザショッピングセンター、アトリオあざみ野はじめ数多くの仕事をさせていただきました。いい人たちに巡り合うことができて現在の自分があると思っています。ある現場で所長から「足場は目をつむっても歩けるようにするから、あなたは品質をしっかりとやってくれ、頼むよ」と言われました。そこは初めて一人でやらせてもらった現場で、つらい思いもしましたが、今では楽しかったという気持ちが強く残っています。
 仕事は一つひとつ違うし、奥が深いものですから、ずっと勉強だなと思っています。これからも職人さんが安心して働ける環境をつくりながら、いい品質を目指して頑張るつもりです。
●職長会活動
凡時徹底し『目指そう!自然と人との調和明るい笑顔で快適職場』がみんなの合言葉

(仮称)強羅ホテルプロジェクト新築工事(首都圏本部)
◆工事場所 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300−34
◆建築主  有限会社スプリング・プロパティー
◆工  期 平成17年4月〜平成18年10月
◆所  長 永峰 滋

 町の活性化を推進する事業として地域、関係者から大きな期待がかかる「(仮称)強羅ホテルプロジェクト新築工事」。場所は箱根登山鉄道強羅駅前、現場前面の道路には観光客や観光バス、車が行きかう。
 作業所掲示板には“元気! やる気! 負けん気! 合言葉は「まかせてください!! 」”。その下には『凡事徹底』という言葉が掲げられている。その掲示板と向き合う形で、職長会掲示板があり、『目指そう!自然と人との調和 明るい笑顔で快適職場』という職長会スローガンとともに、完成予想のパース、職長会の組織表と活動、そして箱根見所マップなどが掲示されている。
 勝俣伸一会長(神静建設梶E機械土工事)、江田浩副会長(鰍ォんでん・電気工事)、会計の島崎典宏さん(新菱冷熱工業梶E設備工事)に職長会活動についてお話を伺う。
 勝俣会長「自然豊かな箱根という場所での工事ですから、『自然と人との調和』という言葉がすぐに出てきて、それがスローガンとなりましたし、箱根見所マップも土地を紹介しようという意見が出て掲示することになりました」
 地域を大切にするということで、箱根大文字焼きの花火寄付、運動会などの行事への参加も作業所とともに行っている。
 主な職長会活動は、朝礼の司会進行、毎週水曜日の安全パトロール、金曜日の一斉清掃、委員会(安全、衛生)、ポスター等の掲示であるが、ポスターは手作りで目立つように作成し、インパクトのある掲示方法を心がけているという。これから職種も増えてくるので、意思疎通の良い現在の形を浸透させ、指示が末端まで徹底できるようにというのが皆さんの願いである。 そんな職長会について、野口工事長は「箱根という土地柄を理解している、和気あいあいとした職長会で、会長を中心に率先して安全衛生活動に取り組んでもらっています。作業所のモットーである『凡事徹底』をテーマに、最後まで竣工目指して頑張りましょう」

全員参加で「ひとつかみ運動」ちょっとした取り組みが大きな安心へ

(仮称)藤和東戸塚上品濃マンション新築工事(首都圏本部)
◆工事場所 神奈川県横浜市戸塚区東戸塚上品濃土地区画整理地内17街区
◆建築主 藤和不動産株式会社・大和システム株式会社
◆工  期 平成16年10月〜平成18年6月
◆所  長 有田 斉


 神奈川県横浜市の郊外にある東戸塚上品濃のこの地域は、土地区画整理組合方式で開発されているところで、その最後の事業の一つである藤和東戸塚上品濃マンション(仮称)を、東急建設が施工している。完成すると地下2階、地上15階、206世帯が入居する。
 この現場での職長会活動は、有田所長の基本方針である「日々の作業を無駄なく、ムラなく行なう」「安心して働くことのできる職場づくり」を受けて、その具体化を実践している。まず行なっていることは「安全設備の先行設置」だ。つまり、安全上必要な手摺りや足場などの設備を作業に先駆けて整えること、その設備を作業員各人が確実に活用するという「自覚」を醸成すること、などだ。
 職長会長を務める小向勝博さん(句vシ建設)をはじめとする職長会幹部のみなさんは、「つい“うっかり”といったミスを起こさないためには、みんなの自覚が大事だ」と、その自覚をうながす活動として参加型の取り組みを実施してきた。基本はパトロールであるが、安全委員会、衛生委員会、風紀委員会のパトロールのほか、金曜日には一斉清掃を行なう。この一斉清掃は原則全員参加。参加することで、安全な作業環境を整え、各人の自覚を培うことができると考えたからだ。そして清掃活動は「ひとつかみ運動」という、「毎日片付ける」取り組みとして定着してきた。建物が建ち上がっている今では、仕事で上下を行き来することが一日少なくとも3回はある。そのたびに自分の周りにある不要なものを分別して出すという、ちょっとした行為が、事故を起こさないという大きな成果に結びついているのだ。
 もう一つの特長は「即時是正」。たとえば、パトロールで発見した改善すべき事項は、その場で是正できることはその場で行なうということ。手すりやネット、足場の不具合があればただちに直し、また行きかう人に安全確認の声かけをする。こんなことが日常化して、誰もが気軽に指摘できる環境が生まれている。

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