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■みどり 94号
●巻頭言
『安全文化』

南口 誠三
東急建設
取締役常務執行役員
首都圏本部長
 徒然草、第109段の「高名の木登り」の話は、皆さんもよくご存知でしょう。
 この話は、木登り名人と言われている人が部下を高い木に登らせ、梢を切り落とす作業をさせていた。高所作業中には一切口を出さなかったが、高所作業を終え、飛び降りても差し支えのない高さまで降りてきた時に「気をつけて降りてこい」と言葉をかけたと云う。
その理由を聞かれ、「目がくらむほどの高所であれば、誰もが自分自身で気をつけるものだが、事故というものは、大概にして安心しきった時に起きるものだから」と答えたそうです。私は、この言葉の中に部下に対する適時な指導を通じて、次世代に「安全の技」を伝承する先人の姿勢が伺えると思います。
 皆さんの記憶にも新しいことと思いますが、日本を代表する企業が安全管理や安全対策の不備から社会の批判の目に晒されました。我々建設業も、常に厳しい評価の目に晒されています。特に、事故、公衆災害、不法投棄などは、社会的信用の失墜をはじめとする、多大な損失を結果として残すものです。物造りを通して社会に貢献するものとしては、安全・環境・品質の確保が基本であり、それらが全うされた結果として信頼と利益を得られるのです。

 換言すれば、安全・環境・品質・原価は、常に同じ土俵の上にあり、そのことを改めて肝に銘じなければなりません。
 建設業も企業再構築の厳しい時期を通じて、世代間の歪みが生じていることを否定できません。だからこそ、我々は今、先輩諸氏から受け継いだ「安全の技」「施工の技」「営業の技」を後輩に確実に伝承していかなければならないと考えています。
 私は、これらの「技術の伝承」のために具体的行動を実践していきたいと思います。そして、次世代を担う技術者は、現状に憂え、甘えることを良しとせず、社会と自分自身の未来を見据えて、技術を磨き、勘の働く人材となる努力を続けて欲しいと願っています。それが、きちんとできる土壌こそが「安全文化」であり、技術者として社会に受け入れられる条件と考えています。
●ズームアップ

平成17年度安全大会を開催


首都圏本部・鉄道本部、災害防止協力会首都圏・鉄道支部安全大会


 『トップの決意とみんなの創意 リスクを減らして進める安全』のスローガンのもと、平成17年度安全大会が6月15日の大阪支店・支部を皮切りに、7月15日の札幌支店・支部まで、全国の本部・支店と災害防止会各支部との共催で開催され、災害防止への決意を新たにしました。
 首都圏本部・鉄道本部と災害防止会首都圏・鉄道支部共催の安全大会は
627日、東京・目黒のこまばエミナースで開催され、参加者が会場を埋め尽くしました。今回の安全大会には支部活動の参考に資するため、札幌から九州まで他支部の支部長および役員も特別参加しました。
 安全大会は、南口首都圏本部長と橋支部長の主催者を代表しての挨拶の後、安全衛生表彰が行われ、無災害賞(平成16年度完成工事)42件、安全衛生管理功労賞9名、安全衛生管理優良賞として29名が表彰され、災害防止協力会本部表彰として6職長会が白岩会長より賞状を授与されました。また、支部の事業活動推進に多大な貢献をした方に贈られる安全衛生功労賞には、安全衛生責任者・職長教育の講師として協力された3名が選ばれ、橋支部長より表彰されました。
 安全衛生表彰の後、小美野渋谷労働基準監督署長、本村東急建設椛纒\取締役専務、白岩災害防止協力会会長の来賓祝辞があり、安全大会第一部を終了しました。
 休憩の後の第二部では、『世界の山々をめざして〜チームワークと山の安全』というテーマで、登山家の田部井淳子さんの特別講演があり、山と建設現場という状況は違っても安全確保のための意識と実践は共通しているという臨場感あふれる話に、会場は聞き入っていました。




安全衛生表彰

平成17年度第1回本部安全巡視を全国19作業所で行う

 平成17年度第1回 災害防止協力会本部安全巡視が6月20日より全国19作業所で行われました。
 7月29日の首都圏本部「帝京大学板橋医療技術学部新校舎新築作業所」では、東急建設本社より浅賀安全環境品質部長、首都圏本部より酒井課長、災害防止協力会本部からは永沢総務部会長、小関安全部会長が参加して安全巡視を行いました。
 作業所から工事概要等の説明を受けた後、現場の巡視に入り、足場や片付けの点検はじめ作業の様子、休憩所の状態などを見ました。 巡視後、職長さんにも参加してもらい、巡視の点検報告、職長会についての質疑などを行いましたが、真夏の最中ということもあって、熱中症の対策についての話が多く出されました。最後に講評と感想では、浅賀部長より東急建設全体の災害状況と傾向についての報告と要請が行われた後、災害防止協力会の永沢、小関部会長からは身近な例をあげての健康管理と適正配置についての話があり、安全巡視を終了しました。

平成17年度安全大会開催報告

〔札幌支店・支部〕 〔名古屋支店・支部〕

7月15日 札幌東急イン 84名参加
講演:林家うん平

6月17日 名古屋栄東急イン 134名参加
講演:湯浅 景元
(中京大学・中京大学大学院教授/医学博士)
「一流スポーツ選手に学ぶ健康科学」
〔東北支店・支部〕 〔大阪支店・支部〕

6月17日 仙台エクセルホテル東急 162名参加
講演:安全ビデオ
「ケガさせないケガしない」プロジェクト

6月15日 テイジンホール 341名参加
講演:ふくだ友子
(イメージアナリスト・人材育成アドバイザー)
「安全は三配りで」
〔住宅支店・支部〕 〔九州支店・支部〕

7月1日 渋谷エクセルホテル東急 105名参加
講演:加藤 正彦(CAP)「クレーム対策とCS活動」

6月15日 博多エクセルホテル東急 261名参加
●現場を訪ねて

高萩協同病院作業所(首都圏本部)
“綿密な打合せ”と“連携作業”が
工事の円滑な進行と災害防止の欠かせない前提

■工事場所 茨城県高萩市上手綱字上ヶ穂1006番-8,9
■工   期 平成16年11月〜平成18年2月
■事 業 主 茨城県厚生農業共同組合連合会
■所   長 上野 弘志

 高萩協同病院は、茨城県厚生農業協同組合連合会が茨城県下に6ヵ所配置している拠点病院の1つで、すでにJR高萩駅の近くのある現在の病院を移転拡大することにともなう新築工事である。完成すると、最新の医療機能を整えた総合的な新病院に生まれ変わり、茨城県北における中核的な拠点病院として、農業関係者にとどまらず、地域の多くの人たちに期待されているものだ。
 現場をお訪ねしたときは、ちょうど工期の半ばにさしかかるときで、躯体がほぼ立ち上がった頃であったが、建築面積が約6,800平方メートル、延べ床面積が約18,700平方メートルにも及ぶ大きな建物であるにもかかわらず、約36,500平方メートルという広大な敷地の中にあるためか、その大きさは現場敷地内に入り、立ち上がった躯体を間近にして、ようやく実感できるものであった。
現場を指揮する上野弘志所長は、これまでにも多くの病院や福祉施設の建築に携わってきたベテラン。その上野所長に、まず病院建設の特徴を聞いてみた。

躯体が立ち上がった高萩協同病院

最新医療機器を備える地域の
総合医療拠点としての期待を担う


上野所長「病院は様々な医療機器が配置される関係で、一般のマンションや事務所ビルとは、多少違ってきます。一番の違いはフロアの階高でしょう。この病院の例で言えば、1階の天井の高さは約2.6mですが、2階の床の高さは約4.5mとなっています。つまり、その床下、天井懐には1.7mほどの空間があるわけです。そこに多種多様な設備が配置されるのです。空調管、電気配線等々、配線、配管類が中心ですが、以前はカルテを空気の圧力で送る気送管というものがあったり、あるいは運搬用の小型のモノレールのような軌道が設置されていたりと、それこそ病院ならではの設備があったものです。現在では、カルテなど書類関係はコンピュータ管理になってきましたので、この病院でも、昔の病院に比べると天井懐は低くなっているのですが、それでも、一般住宅で言えば1階分に相当する空間が天井懐として必要なんです。これが病院という建物の特徴だと言えます」

〔工事数量〕
敷地面積:36,4583.91u
建築面積:6,806.77u
延床面積:18,633.63u
構造規模:鉄筋コンクリート造5階建
建物用途:総合病院

 その他にも、「特殊施設として、高度な手術が行える最新の手術室、磁気断層写真などのMRI室、集中管理のICU室、血管造影のためのアンギオ室といった最新医療機器を導入する施設であることから、電磁波の遮蔽、放射線の遮蔽など、外部への影響や外部からの影響を遮断することが必要です。そのため四方の壁、床、天井に、たとえば銅のメッシュを貼って電磁気をアースで地中に逃がしたり、鉛のボードを仕切り板にするなど、必要に応じて遮蔽機能をもたせているのも病院ならでのことです」と、説明していただいた。

東急建設の実績を背景に受注
無事故・無災害で竣工目指す


東急建設は茨城県での工事に多くの実績があり、その信頼を背景に、この協同病院の工事を受注した。また上野所長は、病院や福祉施設の建築に実績があったことから起用された人だ。その信頼の証を、円滑な工事の進捗と、9月末現在までの約10万時間余の無事故・無災害で示している。


上野 弘志所長

上野所長「工期は約16ヵ月ですが、この規模の工事としては少しタイトな日程になっています。しかし幸いなことに、これまで順調に進行してきました。1階の床面積が約6,800平米という広い面積ですから、同じフロアに多くの職種や大勢の職人さんが入ります。同じ職種で数社が入ることも珍しくなく、茨城の県北では数十年に一度といわれる規模の工事ですから、職人さんは東京や埼玉などからも来ていますが、できるだけ多く地元の業者さんにも加わってもらおうと、地元の会社の皆さんにも協力いただいています。また、この工事は鈴縫さんとのJVであり、さらに電気・空調・排水関係は別途工事として他の企業体の皆さんも入っているのですが、全体の工程管理と安全管理は東急・鈴縫JVが担っています。その関係から、職長会は1つになっていたほうが効率的であるし、作業の進行や安全管理にとっても合理的だろうと、関係者の皆さんに賛同いただいて取組んできました」
 お聞きすると、忙しい時期には500人前後の入場者、会社数では42社を数えたとのことで、その意味では職長会の活動も大掛かりになる。安全のあり方について上野所長の基本的な考え方をお伺いした。


真弓 隆章工事長

山中 達也工務長

毎日欠かさない安全パトロール
会社、職種を超えて交流をはかる


上野所長「平面的に広いというのが、この現場の特徴です。つまり各所に散らばって作業に入るので、それも同一職種で数社があたることも珍しくないため、各職種、職人の連携が欠かせません。その要となる職長会の自主的、積極的な取組みが不可欠です。基本は職長会の自主的な取組みですが、ただ広い作業現場で、安全確保のためにもコミュニケーションが必要ですから、元請と職長会との合意として毎日、職長会を開き、元請も参加して打合せを綿密に行うことにしています」

毎日行っている一成安全パトロール


 ちょうど前期の躯体工事が一段落して、内装工事が中心になる後期に移行する時期になったことから、それに合わせて職長会の編成も最近変わったばかりとのこと。その新しくなった職長会の会長に就任したのは、(株)岩崎左工の小野好正さんだ。小野新会長は左官工で、この工事の当初から入場していたこと、職種柄、建物の内外とも広く移動し、全般について詳しいことなどから会長に推された。小野新会長に、職長会の取組みと、今後の抱負についてお聞きした。


小野 好正職長会会長

小野会長「とにかく広い現場で、同時に多様な職種、大勢の職人が入って作業をするという実情から、なによりも綿密な打合せが必要だという基本的な考え方は、前期の職長会と同じです。その意味では、この作業所には各職長が集まれる職長会室があって、定例の会議はもとより、必要に応じて集まることができるので、打合せや連絡、伝達が濃密にできているのではないかと思っています」
 職長会の取組みとして重視していることは、「他の職種の作業内容を正確につかむこと。たとえ同じ職種であっても、会社が違っていれば、現在どんな作業をしているのかを知っていなければ、自分たちの作業が円滑に進まないし、ひいては思わぬ事故につながります。ですから職種を超えて集まれるというのはとても役立っています。そこで、職長会の集まりは毎日開催。その日の作業内容を確認したうえで、10時30分からパトロールを行います。その結果は、昼の時間に指摘事項・改善事項として報告されます。実は毎朝、全員参加の朝礼をやっていて、当番の人が号令をかけてラジオ体操を行っているのですが、その後、前日の指摘・改善事項を周知徹底させ、その日の作業内容を伝達して、お互いに、いま何をやっているのか、これから何をするのかを知り合う、という取組みを行っています」


現場をきれいにという意識が
安全な作業環境をつくる


 そのほかにも職長会としては、毎週金曜日の一斉清掃、分別ごみの仕分けの徹底(これは集めるときと、現場から出すときに二重にチェック)、詰め所やトイレの清掃、資材関係の整理整頓など、現場をきれいにするという取組みを重視しているとのこと。これは、きれいにする、きれいに使う、という意識が事故を起こさないという作業と密接につながっていると考えているからだ。そうした行動に参加することで、安全意識の向上をはかっている。
 職長会のメンバーから、この日取材にご協力いただいた方にお聞きした


一斉清掃への参加も安全意識の高揚につながる


 職長会で会計を担当している小原俊郎さん(日本電設工業)は災防協が行う諸行事(安全大会、バーベキュー、清掃用具の購入)の会費を預かり、一方で作業の安全に気を配って、「とにかく現場をきれいに」を重視している。整理整頓する気持ちが安全な作業、効率的な作業に直結すると考えているからだ。
神田克之さん(日立プラント・暁飯島・ナバナJV)「空調の仕事ですから、天井懐のダクトなど高所作業が多くなります。安全帯の着用など高所作業で行う当たり前のことを徹底しています」
大金留好さん(共栄鉄筋工業)「鉄筋工ですから、クレーンなど重機との連携作業が多くなります。オペレーターとの無線交信は、お互いに見えない位置での作業ですから、意思疎通は綿密に行います」
吉田明さん(松本総建)「とび工事という仕事で、資材の上げ下ろし時に落下があると重大事故につながりますから、確実な作業をとりわけ意識しています」
草野真一さん(村上工務店)「私が担当している型枠工事は、現在、高所作業が多くなっています。作業の段取り、資材の管理をしっかり行うことが円滑な作業の進行、安全の確保につながると思っています」
折笠研司さん(新菱・飯村・市川JV)「衛生工事は現在、各フロアーに数社が同時に入っていますので、作業基準、安全基準を同一にして、綿密に打合せながら行っています」
東急・鈴縫JVから災防協に参加している工事長の真弓隆章さんは「日常、普通に行うべきことをきちんとやることが大事だと思う。たとえば型枠は親綱、とびは落下防止といったようなことです。それと一斉清掃などで協調性を高めることも、大勢で仕事をするときには、とくに大事だなと思います」
同じく工務長の山中達也さんは「広い現場であることを意識して、資材の運搬時の気配り、整理整頓を心がけ、無駄な動きを省く。すなわち安全の空白を作らないこと。そのためにはコミュニケーションが欠かせません」
主任の石川幸一さんは「大きな現場ですから、みんなが力を合わせて、工期内完成を目指します」と決意を述べた。



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