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■みどり 91号
職長活動実践記
景観百選の地にふさわしいきれいな現場に
明るく元気な挨拶が交わされ気分も爽快!


月浜第一水門建設工事(東北支店)
 ◆工事場所 宮城県桃生郡北上町十三浜地内
 ◆発注者  国土交通省 東北地方整備局
 ◆工   期 平成15年8月〜平成18年3月
 ◆所   長 佐々木 敏昭


現場内にある東屋の前に集合した職長会のメンバー

 宮城県桃生郡北上町十三浜地内、悠々と流れる北上川に沿って月浜第一水門建設工事作業所がある。朝礼広場には所長はじめ所員、職長、全作業員の顔写真とともに一人一人の安全宣言が掲示されている。この安全宣言の掲示は、安全意識の高揚と共有を図るために、佐々木所長が東北新幹線の沼宮内駅の工事を担当したときからのアイディアである。
 掲示板には職長会活動、職長の任務、職長会お知らせを掲示した職長会のコーナーもあり、職長会活動の「目的」として、自主的な連絡調整や職場規律の確立、相互のコミュニケーションと明るい職場づくり、現場施工の円滑化(施工に対する改善と提案)、「職長会が実施すること」では「毎日の活動」として安全施工サイクルの実施、作業環境の整備、「定期的な活動」では安全衛生教育や各種訓練の実施、レクリエーションの企画・運営、安全大会の自主運営などが記されている。  
 職長会が発足したのは今年の1月で、職長全員が初めての顔合わせであった。最初はお互いに遠慮がちなところがあり、作業打合せでも積極的な発言がなかったという。そこで大島英明会長(山川建設梶jが考えたのは、皆が一緒に行動する機会をつくることであった。
 大島会長「このあたりは景観百選にも選ばれていて、地域の人たちからも非常に注目されている現場ですから、きれいな現場にするのは当然ですが、場外に目を向けると、河川敷のごみがすごかったので、全員(職長会発足当時は作業員約40名)でどれくらい取れるのかやってみようと提案をしました」  
 5チームに分け、エリア(全体で400m)を決めて、一番多くごみを持ってきたチームには景品を贈呈した。最初は車のタイヤなども捨てられていて、すごいごみの量であったが、皆の頑張りが続き、現在は景観百選にふさわしい河川敷となっている。  
 さらに全員のコミュニケーションを深めたのが、レクリエーションを兼ねて安全表彰、安全教育を行う職長会主催の安全大会(3ヵ月に1回)である。  
 大島会長は「各職長が非常に積極的に活動してくれていますが、これからもステップアップを続けていきたいと思います」と話す。

コミュニケーションと連帯感を向上させて
明るく、健康で快適な職場環境をつくろう


与野共同溝その2工事(首都圏本部)
 ◆工事場所 さいたま市中央区上落合2丁目〜上落合6丁目
 ◆発注者 国土交通省 関東地方整備局 大宮国道事務所
 ◆工  期 平成15年3月〜平成18年3月
 ◆所  長 浜野 輝寿

 JR埼京線北与野駅を降りて、国道17号線に出ると、「与野共同溝その2工事」の現場が見えてくる。車の流れの激しい場所での工事のため、警備員が周囲に細心の注意を払いながら車と人の誘導にあたっている。この工事は一般国道17号線下に水道管、電気、電話のケーブルを将来収容するための共同溝を建設するものである。  
 職長会の発足は今年の4月で、同時に職長会規約も制定した。規約は「1.総則」から「8.付則」まであり、役員、会員、顧問の名簿が添付されている。
 規約の中に、安全衛生活動の自主的運営、付属施設の自主的管理、元方安全衛生活動との有機的連携、パトロールの自主的運営、安全衛生活動の研究等の職長会の活動項目と共に、その具体的な取り組みが記載されている。
 玉田結城会長(白岩工業梶jに現在の主な活動について伺う。
 「ここの職長会の目的は、コミュニケーションと連帯感を向上させ、健康で快適な職場環境をつくること、全員参加による労働災害の防止、高品質の施工と工程の短縮、コストの低減ということです。
 その目的に沿って活動していますが、一例として、第2、第4金曜日の職長会パトロール後に職長会を開催して指摘事項の確認と共に災害事例の研究等を行い、それを記録として残し保管しています。その他、毎週末の朝30分間の一斉清掃、KY活動、ごみ分別、収集片付け、喫煙場所の管理、休憩室、倉庫、資材置き場、駐車場、トイレ等の管理清掃などがあります」
 当たり前のことをきちんとしよう、皆で一緒に動こうというのが、職長会活動の基本だと考えていますと玉田会長は言うが、これからの活動について、他現場の見学会(違った視点で見てみることで改善点を明らかにする、いい点を吸収して展開する)、安全クイズ、家族を現場に呼んで家族見学会をやってみたらどうだろうかというように、玉田会長はじめ皆さんから次々に出てくる。
 そんなアイディアが出てくるのも、コミュニケーションのいい職長会の証であるようだ。
●技

お互いを尊重し、協力しながら
安全第一でいいものを作りたい


小野寺 俊彦さん(41歳) 叶島ガス圧接仙台・鉄筋工事

 都会に行けば何とかなる、そう思って生まれ故郷の岩手を離れたのが18歳のときでした。住み込みで使ってもらえることになったのが神奈川県の鉄筋工事の会社でした。それが鉄筋工としての始まりです。  
 その会社での4年間は、一日中ほぼ毎日、鉄筋を担がされました。しかし、社長と兄弟の専務、部長からは家族同様にしてもらい、どんなに仕事がきつくても止めようとは思いませんでした。  
 事情ができて岩手に戻り、現在は圧接、鉄筋の二つの仕事をする会社で働いていますが、鉄筋の方はこれからという会社だったので、すぐに現場を任せられてしまいました。任せられたといっても、まだ分からないことが多くありましたから、そんなときは監督さんや他の会社にまで聞きに行きながら仕事をするという状態で、失敗を繰り返しながら、現場が一つ終わるたびに少しずつ成長していったと思います。  
 これまで印象に残っている現場は、神奈川での最初の現場です。これはある大学の建設工事で、信じられないほど大きかったという強烈な印象があります。そして、初めて先組み工法を経験した仙台のショッピングモールも忘れられない現場です。  
 私が大切にしていることは、神奈川での社長の「現場の仕事は、鉄筋とだけ仕事をするのじゃないぞ、いろんな職種の人と一緒になって、協力して一つの物を作る、そういう仕事なんだぞ」という言葉です。私はこのことを忘れずに、そして「不安全行動はしない、させない」を自分の安全宣言にして、これからもいい仕事を心がけて成長していきたいと思います。

自分達が関わったものが姿を
見せる時の気分は最高の贈物


藤澤 博明さん(33歳) 叶ツ山工務店・型枠工事


仕事の手を休めて長男の茂範さんと談笑
 最初は建築の型枠からスタートしましたが、8年前から土木をやるようになりました。建築と土木では部材とボリュームの違いがありましたし、大体が打ち放しの仕上げになるので、シビアな世界だなと改めて感じました。 土木での最初の現場は群馬の浄水場の工事でしたが、その後、共同溝の改修工事や地下鉄、鉄道工事に関わってきました。  
 職長になって初めての現場は常磐新線片田路盤工事でした。施工長さ500m近くあるU型擁壁の仕事で、大枠を組んでレッカーで置いていくのですが、むずかしい仕事であったのと同時に、重量物を扱うので吊り荷の落下防止には全神経を使いました。  
 どの現場もそれなりにきつかったという思いがありますが、とくに厳しかったのはJR武蔵野線越谷〜吉川間高架橋工事です。これも職長として行った現場ですが、施工範囲が600m以上あるうえに工期がなかったので、作業員も30人くらい入れて、ほとんどつながって仕事をするという状態で、やりくりするのに大変な思いをしました。
 しかし、あの600mの高架橋を眺めると、出来映えが良くて、我ながらすごい仕事をしたものだなあと感じますし、自分にとって一番印象に残る現場になっています。自分たちが関わったものが姿を見せたときの、何ともいえない気分と終わってホッとする感覚は、この仕事をしている者への最高の贈り物だと思っています。  
 これからもプライドをもって、いろいろ自分なりに改善をしていきながら、安全でいい品質のものを造っていきたいと思います。
●現場を訪ねて

(仮称)天津小湊町立統合中学校建設工事(首都圏本部)

南フランスを思わせる赤い屋根瓦とドーム
複雑な構造と形状の建物を完成させよう!

■工事場所 千葉県安房郡天津小湊町天津1033番地他
■実施工期 平成15年9月20日〜平成17年2月10日
■発 注 者 天津小湊町 町長 片桐 有而
■所  長 吉田 康明

 千葉県天津小湊は房総を代表する観光地である。海水浴、サーフィン、ハイキング、キャンプ、名所旧跡、そして新鮮な魚介類に恵まれたこの地は春夏秋冬、観光客でにぎわう。
 JR内房線安房天津駅から町道であろうか、狭い道を海のほうに向かって歩いて行くと、足場とネットに囲まれた建設中の赤いドームが見えてくる。ここが「(仮称)天津小湊町立統合中学校建設工事」の作業所である。現場に隣接する既存の天津中学校の校舎から生徒の声が聞こえてくる。
 統合という言葉が示すように、天津地区の天津中学校と小湊地区の小湊中学校を統合して新しい中学校にするということで、かなり以前から統合の計画があったそうだが、少子化の波が年々進んでいることもあり、このたび事業が実現し、統合中学校の建設ということになったという。
 スクール棟、開放棟、交流棟で構成されることになる統合中学校の建設は、年来の事業の実現とあわせて空の青、山の緑、そして波といった、この地域の自然環境に調和した色彩の建物ができるということで、天津小湊町あげての注目現場となっている。
 主な工事概要は別表の通りである。

『工事概要』
[敷  地]
敷地面積 20,803.00u
[建物規模]
建築面積  2,075.31u
延床面積  4,003.40u
施工延床  4,866.10u
構造・規模 RC造(一部SRC造) 地上4階 最高高さ 24.51m 
軒   高 15.91m
根切深さ GL−3.35m
地業・基礎 杭基礎
(プレボーリング拡大根固め工法)72セット
[主な外部仕上げ]
屋  根 洋風焼成屋根瓦噴き、屋上・テラスはAS防水の上 押えCON
外  壁 コンクリート打放しの上、微弾性アクリル樹脂系こ て仕上塗料
軒  裏 アクリル系リシン吹付



グラウンドからみた現場全景

既存校舎を運営しながら工事を開始

既存の中学校を運営しながらの工事であるということと併せて、小学校とも 近接しているため、児童、生徒の安全確保と授業に支障をきたさないために、 教育委員会と学校、PTAと、設計事務所、そして東急建設からは営業担当者と 吉田康明所長が参加して意見交換を重ね、通学路の問題等の取り決めが整い、 平成15年9月20日に工事がスタートした。

完成予想図


吉田康明所長
 吉田所長「既存の校舎を運営しながら工事を行うということで、区画関係を きちんとすることが最初の仕事となりました。まず学校への進入路と現場への 進入路を盛り替えるために、既存の学校への進入路を工事用に使わせてもらい、 その脇に新しく学校への進入路をつくり、生徒の通学路と学校関係者と来客用 車両、給食車両関係の整備をしました。また、近接している小学校の児童も中 学校の敷地の中を通って学校に行くので、グラウンド工事(15年度工事)のと きにグラウンドに通路の囲いをして通学路を確保しました。
 通学時間帯の問題では、午前7時30分から8時15分までは工事車両を入れ ないことになっていますが、夕方は小学校も中学校も下校する時間が決まって いないために制約はありません。ただ、周囲は古い町の道路でかなり狭いもの ですから、工事車両は少し先にあるバイパスから入ることにしています。
 学校の建設ということで、近隣の方たちは協力的で、苦情は現在1件もあり ません」
泉雄一郎主任

藤野宏彦主任
 吉田所長に案内されて建設中の建物外部と内部を見ると、南フランスをイメ ージした赤い屋根瓦、小窓が連なる校舎、近く海をイメージした波形のブライ ンドがある図書室など、従来の公立学校のイメージを払拭してしまう。そして 形状の複雑さに驚く。吉田所長によると、交流棟の尖塔はフィレンツェのドゥ オモと同じような形とのこと。
 使われている瓦はフランス産で、国産のものではイメージ通りの色彩が出な いという。その瓦が着くまでに船で3ヶ月ほどかかるから、数量管理も重要な 仕事であった。そして、海からの強い潮風の影響を受けないために、沖縄と同 じ施工法で、1個1個ビス止めをしているという。


安全大会

職長会パトロール

複雑な形状と打ち放しコンクリート

吉田所長
「かなり複雑な建物であり、内部はほとんどコンクリート化粧打ち 放し仕上げというのが、ここの工事の一番の特徴です。とくに交流棟(SRC 4階建て)は1階は大階段があり、あとは柱だけ、2階3階も柱だけ、4階 だけフロアがあるという構造ですから、支保工足場も下の大きな階段部分の 入り組んだところを細かい材料をやりくりしながら組んでいくという作業に なりました。しかもアールを多用した非常に複雑な形状になっておりますか ら、型枠も1日に何uもできないというなかでやってきました」 
 交流棟の 柱もすべてリブが付いていて、1回コンクリートを打って型枠を解体すると 目地の部分が全部だめになるため、それを加工場に持ち帰って目地を取り、 新たな目地を持ってきて建て込みをするのだという。スクール棟、開放棟(共にRC造3階建て)も一部吹抜けやアールになっているのが目につく。そして、内部はコンクリートの打ち放しが非常に多い。
 「スクール棟、開放棟は最後の仕上げに入っているところですが、空調が部分的にしかないので、打ち放しの仕上げのときに霧吹きで水をかけてチェックをしてきました。また、小さな窓がたくさんあり、ひび割れをしやすい状況ですから慎重の上にも慎重にコンクリートを打ちました」と吉田所長は言う。
 吉田所長に作業所運営について伺う。
 吉田所長「工程表は、現場をスムーズに進めるうえでの『明確な目標』として表したものであり、社員、各職長が工程表をよく理解し、仕事を進めることと、職長会の活用を私は現場運営の基本にしています。ここは工期が比較的長くありますから、どの棟の仕上げも均一になるように、できるだけ少人数で、固定された人数で回していくように進めています。そして、工程がスムーズに行っているということは現場が整理された状況で、安全性が高いということだと思っています。
 職長会の活用ということでは、良いチームワークをつくって、一致協力して仕事をしてもらうことが安全でいい品質づくりの条件です。ここの職長会には非常に良くやってもらっています。休憩所はピカピカですし、現場もきれいですし、不安全な箇所がないかどうかきちんと見てくれています。先日の災害防止協議会で現場が良く整理されていると言われましたが、非常にうれしい思いがしました」  
 安全面に関して吉田所長が安全大会等で皆に言うのは、安全は個人個人の意識の集まりであり、自分たちでつくっていくものだ、安全にやろうという意識がなければ品質についてもきちんとしたものができないということである。そして「急がば回れ、近道をしたらダメ」と言う。

地域あげて注目の工事もあとわずか

 複雑な構造と形状、コンクリート打ち放しの建物は職長会のチームワークなしでは不可能だと吉田所長は言うが、その職長会の会長と副会長に話を伺うことにする。


高橋登志夫会長
 高橋登志夫会長(笈苡繿g・とび工)
  「職長会の主な活動としては、職長会パトロールとフロアマスターがあります。パトロールは毎週月曜日に行い、悪い箇所があるとすぐに是正をしています。フロアマスターはフロアの清掃管理などを行いますが、手に終えないという報告があると、最初のスローガンは一斉清掃をなくそうということでしたが、一斉清掃できれいな現場維持に努めています。また、グラウンドは夜間照明があって一般の人も日曜日や夜に出入りしていて、タバコの吸殻などが落ちているので、1ヶ月に1回グラウンドのごみ拾いをしています。  
 安全面では現地現物のKYKの実行、そして安全帯の着用、使用は常識なんだよと口を酸っぱくして言っています。  
 自分自身、こういう複雑でむずかしい建物は好きです。工夫してやるのが面白いし、こういう変わった建物はなかなか経験できるものではないですから。  
 今まで無事故でやってきましたから、最後まで事故なしでやります。せっかくいい建物ができても、事故が起きたら何にもならないですからね」  

平野正和副会長
 平野正和副会長(青木左官工業求E左官工)
  「学校の仕事はこれまで何回もありましたが、こんな形のは初めてです。学校というイメージでなく、ペンションみたいです。安全面で注意しているのは足元の片付けと整理整頓、開口部の確認、安全帯の着用です。会長とのコンビは2回目で、気心が知れていますから、仕事も職長会もやりやすいです」

吉田孝助副会長
 吉田孝助副会長(鞄。江木工所・造作大工)
 「最初、副会長にと言われたとき、え、自分でできるの…?と思いましたが、建物を最後までうまく仕上げるためには、職長会がチームワークよく一体になってやらなければいけないなと感じています。仕事でも安全面でも心がけているのは、横着をしないことです。電ノコを使う場合でもきちんとした台の上でやらなかったりすると大怪我のもとになりますから。いつも所長が言っているけど『急がば回れ』をモットーにしています」

 取材にうかがった時点(10月初旬)ではスクール棟と開放棟は仕上げ工事に入っており、交流棟はこれから屋上ドームの外部足場と内部足場を組み、鉄骨の母屋を組んで耐火野地板を張っていくという作業にかかろうとしていたが、平成17年2月の竣工をめざして、吉田所長は次のように話す。  
 吉田所長「支保工の足場など高所での作業がまだありますから、最後まで十分注意して作業を進めて、地域にかけがえのない建物、学校として喜んでいただける、いい品質のものに仕上げたいと思っています」  
 日の出の美しい房総半島の天津小湊に、美しい校舎が出来上がるのも、あとわずかである。


昼の打合せ

 

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