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■みどり 90号
職長活動実践記
発足して10年目を迎える職長会は自然体
互いに率先垂範して働きやすい職場を形成


世田谷代田駅・喜多見駅間線増連続立体交差工事(鉄道本部)
 ◆工事場所  東京都世田谷区豪徳寺1-24-7
 ◆発 注 者  小田急電鉄株式会社複々線建設部
 ◆契約工期  平成6年11月〜平成17年3月
 ◆所   長  持木 武志


焼肉大会で挨拶をする山登会長(写真向って右から二人目)と職長の皆さん

 職長会を意識しない職長会活動だ、と職長の皆さんが言う。日々の片付け清掃、ごみの分別収集、パトロール、親睦会など活発な活動を続けているが、なぜ意識しない職長会活動なのか、山登伸明会長(白岩工業梶jは次のように言う。  
 「平成6年に職長会が発足してから10年近く同じメンバーですから、やるべきことが皆の習慣になっていて、職長会の活動をやっているという意識はほとんどありません。もちろん会則はありますし、清掃当番はどこの業者などといった決まりごともありますが、今はそういう形ではやっていません。と言うのは、作業を終えた者が休憩所やトイレの片付け、清掃を済ませて皆を待っているという状態になっているからです。
 これも職長会が言い出したことではなく、自然とそうなってきました。やるべきことを、だれもがごく自然にやっているというのが、長期間にわたる現場の職長会の特徴だと思いますね」  
 もう一つの特徴は、職長の中だけで話し合いをして進めているのではなく、作業員も入ってきて一緒に意見を交わす。だから、非常にコミュニケーションがいい。集まれというとすぐに集まり、調整も業者間でてきぱきと進める。
 しかし、最初の頃は現場ルールの周知徹底に注意を繰り返した。特に営業線との近接工事であり、現場周辺の狭い道路を通勤・通学客、買物客が絶え間なく行き来する中で、最盛期には百数十人の作業員が入って仕事をしたが、それが一度に休憩所から現場に向かうと、一般の人は道路を通れなくなってしまうから、現場への入り方一つにも気をつかった。「災害防止は第一の命題ですが、この現場で特に注意しているのは近所の方に迷惑をかけないということです。道路を汚さない、一般の人を優先して通してあげる、そして営業線との近接工事だから飛来防止を徹底する、ホームから皆の作業や行動は見られているのだよと、新規入場の時には口を酸っぱくして言ってきました」と山登会長。
 長かった工事もあと1年弱で終わる。次の現場でも「自然体の職長会」をというのが皆の気持ちである。

安全確保に妥協なしで、厳しい指摘を行い
楽しむところは楽しく働きやすい現場を!


冨士吉原二丁目優良建築物新築工事(名古屋支店)
 ◆工事場所  静岡県富士市吉原2-101-1
 ◆発 注 者   冨士吉原二丁目優良建築物建設組合
 ◆契約工期  平成15年11月10日〜平成17年8月20日
 ◆所   長  大橋 泰久

 躯体三役が揃った今年の4月に職長会がスタートし、現在のメンバーは10社である。会則の中には10項目の活動が記されていて、職長会活動への熱意が伝わってくる。その中でも、取材に伺った7月時点で特に力を入れていたのが、朝礼時の指差し称呼とシュプレヒコールと現場パトロール、そして県道と市道にはさまれた交通量の多い場所ということから、第三者災害を絶対に起こさないための周知徹底であり、周辺の巡回も欠かさない。  
 朝礼は職長が一週間交代で、「ヘルメット、あご紐、服装、安全帯、足元、周囲はいいか!」と指差し称呼をし、「今日も一日頑張ろう!」のシュプレヒコールで気持ちを引き締める。現場パトロールも一週間交代で行い、職長会議で点検結果を発表して、悪いところはすぐに是正をする。  
 職長会の杉本安次会長(金子建設梶jは次のように言う。  
 「安全確保に妥協はありませんから、悪いところは名指しで指摘します。ルールを守らない業者に対しては一緒に仕事をできないと、きっぱりと言います。それから現場には敷鉄板があって、それにはさまれる可能性があるから、特に安全靴の徹底をうるさく言っており、現在は99%が安全靴を履いています。残り1%は知らないで初めてくる人ですが、その場で注意をして、近くに店があるから、昼からでもいいから買ってくるようにと言っています。何事も最初が肝心ですし、ルールを守ることが安全でいい仕事をする条件ですから」
 これから階高が増え職種も増えていくことになるが、その対応として考えているのがフロアマスターをつくって、そのフロアの片付け、整理整頓、戸締り等を行い、いつもきれいな現場にして気分よく働こうということである。
 悪いところは妥協せず厳しく指摘をするが、楽しむところは楽しくやろうということで、皆が和気あいあいとなるような懇親会も計画中だという。
 大橋泰久所長も「職長会が現場運営の潤滑油となり、無事故無災害での竣工を必ず実現するよう活躍してほしい」と期待している。
●技

現場には人との出会いがあり
自分を一歩一歩育ててくれる


外崎 等さん(39歳) 白岩工業株式会社(首都圏・鉄道支部) 鉄筋工事

 この現場(世田谷代田駅・喜多見駅間線増連続立体工事)にきてから8年が経過します。近隣問題や営業線との近接工事という作業環境としては大変なところですが、仕事がやりやすい方法を考えてくれるし、まとまりがある現場ですからやりがいを感じています。
 この現場が終わって高架橋などを見たときには、これを俺たちがやったんだ、でかい規模だったが、よくやったな、自分も少しは大きくはなったかなと思うのではないでしょうか。それが、この仕事をやってきて一番感動をするときです。  
 仕事をしていく上で安全から工程、単価まですべて関連してきますが、鉄筋工事を行う技術職として、自分たちの仕事は求められたものをきちんと渡すことが使命であると考えています。品質が悪ければ次に使ってもらえないだろうし先に進めませんから、品質第一を心がけています。そして、一つ一つの現場は何かが違うし、それぞれむずかしさがありますが、とにかく一生懸命にやること以外にないと思って仕事をしています。  
 安全面で心がけているのは、作業員への目配りとコミュニケーショをよくとるということです。お互いを、相手を大切にするという気持ちが、事故を未然に防ぐことになると考えているからです。
 経験20年になり、地下鉄工事でライフラインの埋設物に苦労しながら仕事をしたことなど、それぞれの現場には思い出がありますが、一つ一つの現場が自分を一歩、一歩育ててくれているし、そこでの人との出会いが次を生む本当に大事なことですから、それを大切にしていきたいと思っています。

30歳で鉄筋の親方に転進し
自分で仕事を覚えに覚えた


畑 俊充さん(57歳) 扶桑工業株式会社 (名古屋支部) 鉄筋工事


仕事の手を休めて長男の茂範さんと談笑
 鉄筋の仕事に就く前は北海道で水商売をしていましたが、友人が鉄筋をやっていて、造園の仕事とか住宅の基礎工事を手伝ってくれないかと頼まれて、時々現場に足を運んだりしているうちに、この仕事はいいもんだなと思うようになり、友人の勧めで若い人を集めて始めたのが30歳のときでした。
 とにかく親方ですから、何でもやらなければいけないし、何でも自分で仕事を覚えなければなりませんでした。もともと向いていたのかどうか、半年で覚えるべきことは覚えました。
 最初の仕事は小さい現場でしたが、その次が札幌一の繁華街、薄野の現場で、これは今でも一番印象に残る仕事でした。
 薄野でもど真ん中の交番横に8階建てのビル建設で、朝は通勤ラッシュで材料が搬入できないし、夜は午前2時3時まで飲食店でお客や従業員が飲んでいるから、その人たちが帰った後に搬入するしかないわけです。その上、場所がタクシー乗り場でクレーンが使えず、タワーで外から揚げるしかなく、それがきつかった。仕事が終わったときには体重が10キロ減っていました。
 それからずっと北海道で仕事をやっていて、こちら(静岡方面)に皆を連れてきてから7年目になります。  
 この現場(富士吉原二丁目優良建築物新築工事)で息子(茂範さん・職長会副会長)と一緒にやっていますが、自分からこの仕事に入ってきて、これだけの現場を叩けるようになって大したものだと思います。息子からは仕事をやり過ぎないようにと言われることがありますが、つい一生懸命になってしまってね。
●現場を訪ねて

道前道後平野農業水利事業
志河川ダム付替道路(その16)工事(大阪支店)

「環境と地元の住民にやさしく」をモットーにして
全工期無事故無災害でいい品物を造りあげよう

■工事場所 愛媛県周桑郡丹原町楠窪地内
■発 注 者  農林水産省 中国四国農政局
■工   期 平成16年3月30日〜平成16年12月4日
■所   長 杉田 真也

 四国沖にあった熱帯低気圧が突然台風となり、四国地方を中心に襲った8月上旬、「現場を訪ねて」の取材のためJR予讃線壬生川駅を下車する。気象情報では愛媛県は雨のはずだが、太陽がぎらぎらと輝いている。現場に向かうタクシーの中で、運転手さんは「愛媛県でも南の方は雨でしょうが、このあたりは山に囲まれていますし、石槌山がありますから雨が降らないところです」と言う。
 作業所のある愛媛県周桑郡丹原町は西日本一の高峰、日本七霊山の一つ石鎚山(標高1982m)の西側に位置しており、四国霊場八十八箇所を巡礼するお遍路さんをよく見かけるところである。そして、"五感にうったえる「ふれあいとであいのまち」丹原町"というキャッチフレーズのとおり、お遍路さんをあたたかく迎え、疲れを癒してくれる土地柄である。
 工事を行っている地区(道前平野)は瀬戸内海に面し、雨量の少ない地域にあるため河川の流量が乏しく、昔から灌漑用水が不足し、しばしば旱魃の被害を受けてきた。そのため、ため池を築くなど用水確保に涙ぐましい努力を重ねてきたという。  
 志河川(しこがわ)ダム(平成19年度完成予定)はこの地域の農業用水安定供給を図るため計画されており、今回の工事はそれに伴う町道(生活道路)の付替工事である。


コンクリート舗装用機械

工程に工夫を重ねて難問をクリア

 山裾を走る車はやがて事務所に到着。所長と主任の、所員が二人だけの作業所と聞いていたので小さな事務所を想像していたが、2階建ての広い建物で室内は整理整頓が行き届き、非常にきれいだ。杉田真也所長によると、この前まで他社が工事事務所として使用していたものを引き継いだとのことで、掃除も杉田所長と三善俊明主任(監理技術者)の日課になっている。ここから大阪まで特急と新幹線を乗り継いで4時間はかかるから、杉田所長は2階で寝泊りをしており、家に帰れるのは月に1回がやっとだという。


杉田真也所長

 杉田所長「これまでずっとトンネル工事を担当してきましたが、大きな現場でしたから所員の数も多くローテーションが組めて、隔週くらいで家に帰ることもできましたが、ここは二人のうち一人は必ずいなければなりませんし、会議や打合せが結構ありますからローテーションが組めないんです」
 そんな苦労もある作業所であるが、それにプラスして大変だったのが、工期がただでさえ短い上に、一般開放が8月1日(道路、トンネル)と12月1日(橋梁)という工期内工期という制約に加えて、当初の設計の見直しと再調査等をしなければならなかったことである。
 「私が所長として仕事をするのは、この現場が初めてなんです。トンネルと違う工種を久しぶりにやれるし、ちょうど手ごろな現場で自分を試すのにはいいな、最初の2ヶ月の間に方向性と段取りをきちんとつけておこうと思ってやってきたのですが、いざ来てみると設計の見直しをしなければならないことがわかり、再調査をして設計変更、工法、施工範囲の見直しなど思わぬことが起きました。このままだと落石対策工も橋梁工事である鋼製ラーメン桟道橋工の鋼材の発注もロールが毎月20日期限になっており、5月20日までに発注しないと絶対に間に合わないという状況で、最初の2ヶ月は胃の痛くなるような毎日でした。工程管理の工夫と苦心と皆の頑張りの甲斐あって、現在はこちらで考えた工程にきっちりと乗っています」と杉田所長。

  工程を軌道に乗せるために、他工区との調整、連携も作業所の重要な仕事であったが、これも良い結果となっているという。


三善俊明主任

 工事内容は次の通りである。

[工事内容]
・鋼製ラーメン桟道橋 L=50.18m
  全幅員 W=6.2m I型鋼格子床版(t=180mm)20.3t
  鋼管杭φ500(L=7.5〜15.0m)18本
・落石対策工
  密着安定型ネット工 3,400u
・トネンル照明設備工 1式
・付帯工 1式

地域と環境を大切にしながら工事進行  

 取材に伺った時点では落石対策工(法面の防護工)、道路舗装(トンネル2本の舗装含む)、トンネル照明設備工が終わり、鋼製ラーメン桟道橋工が始まっていたが、落石対策工には特に気をつかったそうだ。というのは、付替道路の入口の斜面は道路までの高低差最大68m、勾配70度のところでの施工であったからだ。


落石対策施工の状況と施工後の状況

 杉田所長「今でこそ法面の前に安心して立っていられますが、防護をする前は岩がむき出しになっていてオーバーハングの状態でしたから、雨のたびに大きな石が道路に落ちてきました。そんな状態でしたから、調査を行い、設計の見直しをして施工に入りました。施工方法は、まず最初に下に落石防止用の大型土のうを積み、草を刈りながら浮石などを下に落とし、それをすべて撤去したあとで上から施工していき、ネットで防護するというもので、工事中は工事関係者であっても立入禁止にしました。そして、上下作業は絶対にやらないよう毎日繰り返し言いました。非常に危険箇所での工事で、工期も厳しい中で皆さんに良くやってもらい、事故もなく終えることができました」

 安全衛生管理の重点項目は次の通りとなっている。
  ・墜落転落災害の防止  
  ・重機クレーン災害の防止  
  ・飛来落下災害の防止  
  ・第三者災害の防止

 「新規入場時教育のときに周辺環境を踏まえた作業所の決まりを教育しました。絶対に事故を起こさないというのはもちろんですが、地域住民から苦情の出ないように工事をするというのがもう一つの大きな目標です。周辺には田畑などがあって地域の人たちが出入りしていますから道路を汚さないこと、農耕車がいくらゆっくり走っていても追い越しをしないように、地域優先を徹底するようにと言っています。また、周辺を流れている川は水がものすごくきれいですから、汚さないようにすること、生コン車は現場で洗わないで帰ってから洗うということにしています」  
 地域との良好な関係の中で工事を進めるため、志河川ダム関連の他工事と連携をとりながら取り組んでいるが、そのうちの2、3を紹介する。
 ・志河川ダム安全協議会の会議を毎週金曜日に行い、各社の週間工事予定、施主からの要望事項あるいは地元からの苦情、要望について打ち合わせを行っている。
 ・6月と9月に町道の草刈りと清掃(志河川ダム協議会)。
  そして、隣の工区を担当している大成建設と合同で、橋梁工事が完成したあとに地元の小学生による見学会を行い、橋梁の名称を募集しようと作業所では考えている。

鋼製ラーメン桟道橋工が始まった

 条件変更によるあわただしさも静まり、工事は着々と進んでいるが、落石対策工事の指揮をとった増岡孝英さん(ケミカルグラウト梶jに話を伺う。

 増岡孝英さん「最終的に密着安定型ネット工法が採用になりましたが、この工法は網を張ってアンカーを打ち、網が張り終わってからロープを縦横に張るというもので、通常の網よりも径が大きく厚みがあり、その中に土がたまって草木が生え自然の状態になりますから、自然調和型落石防護工と言われています。今回の工事は半端な勾配ではないし、高さもありましたから、皆が自然に気を引き締めざるを得ないということで、安全確保の面では逆に良かったかなと思っています。
 ただ、一番暑いときでの工事でしたから、大変だったのは熱中症対策でした。斜面は一日中陽が当たる場所で、特に網を張ったあとは網が金属ですから、その照り返しがすごいんです。スポーツドリンクを用意したり、現場の休憩所にクーラーをつけたり、日よけ用のヘルメットとか、さまざまな対策をしながら工事を進めました」

 現在、鋼製ラーメン桟道橋工に入っているが、職長の今村忠志さん(JFEシビル)は次のように言う。
 今村忠志さん「四国での仕事は足掛け5年で単身赴任が長いので、アパートを借りて住んでいます。工事は始まったばかりですが、高所作業が多いので墜落転落災害がないように、危ないと思ったら危ないところには行かないようにと注意しています。また山の中での仕事で暑かったり寒かったりという環境ですから、作業員の状態を良く見るようにしていますし、夕食を皆と一緒に食べながら不都合がないかなど聞いています。そして、朝礼のときに具合が悪そうだったら帰すことにしています。今回の工事は工期があまりありませんが、技術には誇りをもっている工種ですから、いい品物を工期内に渡せるよう努力したいと思います」

 最後に杉田所長の言葉である。
 「都会にはない素晴らしい自然環境の中での工事ですから、『環境にやさしく、地元住民にもやさしく』をモットーにしなが、全工期無事故無災害でいい品物をお渡しできるように、皆で力を合わせながら工事を進めていきます」



 

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