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■みどり 88号
職長活動実践記
業者間の壁を乗り越え一体感をもって
  皆の共通の目的である建物をつくろう


(仮称)江田記念病院新築工事(首都圏本部)
 ◆工事場所  横浜市青葉区あざみ野南1-1
 ◆事 業 主   医療法人 社団 明芳会 理事長 中村 哲夫
 ◆契約工期  平成14年12月25日〜平成16年4月30日
 ◆所   長  北原 弘


   会議室や詰所、朝礼広場など、皆の目につくところに、職長名と顔写真、職長としてのひとことを書き入れた「職長会組織図」や「職長の職務」、「江田記念病院の現場ルール」が、大きな文字で掲示され、また各フロアには「フロアマスター」が表示されている。
 これらは職長会で意見を出し合って決めたものであるが、「江田記念病院の現場ルール」はこの作業所での守るべき項目7点が簡潔明瞭に示されているので、写真で紹介する。  主な活動は、朝礼の司会、安全パトロール、月に2回の場外清掃、フロアマスターなどであるが、皆で力を合わせて確実に進めてきた。
  金子淳一会長は、職長会について次のように話す。
 「最初に皆と話して決めたのが、全員が共通の目的でひとつの建物をつくるのだから、『業者間の壁を乗り越えて、一体感をもって注意しあい、刺激しあっていこう』ということでした。そして、元請さんから言われなくても、スムーズに仕事ができるように、自分たちでできることは自分たちでやろうじゃないかということで活動を続けてきました。現場ルールは、特に重要なものをピックアップして決めましたが、皆よく守ってくれているので良かったなと思っています」
 北原所長は職長会に対して、「自主的にやってくれているし、明るくて本当にいい職長会に恵まれました。永年現場をやってきましたが、最高の職長会だと私自身誇りに思っています」と二重丸の評価をする。


お互いにざっくばらんに話しあいながら
 環境を整備して働きやすい現場にしよう


(仮称)じょうてつドエル・アイム東札幌新築工事(札幌支店)
 ◆工事場所  札幌市白石区東札幌2条1丁目106-2他
 ◆発 注 者   株式会社 じょうてつ
 ◆契約工期  平成15年5月26日〜平成16年3月26日
 ◆所   長  西野 進

   職長会会則の中の目的は次のように記されている。「本会は、(仮称)じょうてつドエル・アイム東札幌新築工事に当たり協力会社相互間のコミュニケーションを密にし、知識を啓発し、連絡調整を円滑に行い、安全衛生管理並びに施工管理を自主的に推進することにより労働災害・事故を未然に防止し、生産性の向上を図り、併せて明るく、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」 この目的に沿って、毎月の安全重点目標案作成、週1回の安全パトロール、休憩所・トイレの清掃管理、新規入場者教育、フロアマスター等、自分たちで決めたことを力を合わせて着実に活動しているのが、この職長会である。 職長会が発足するに当たり、西野進所長が職長さんたちに話したのは「マンション工事は非常に狭いエリアの中で工種も非常に多く、その多い工種が短期間で繰り返しの連続となるが、その中で、環境を整備しよう、働きやすい環境を維持していこう」ということであった。  会長の高橋基さんは「所長の方針が、ざっくばらんに話しやすい現場にしよう、そして快適な職場にして明るくいこうということですから、お互いに言いたいことを言い合える雰囲気になっています。この現場は一斉清掃をしないことにしていますが、皆が片づけをしっかりやってくれているから、いい状態で仕事ができています」という。  西野所長は職長会の活動に対して、「非常に積極的に動いてくれて、皆をまとめてくれています。和気あいあいとしていい職長会です」と評価する。
●技

自分の家を作るという気持ちで
  誠意を込めた仕事を続けていく


金子 淳一さん(45歳) 株式会社 天内鋼業 (首都圏・開発支部) 鉄筋工事


 この仕事に入ったとき、一緒に入った仲間の中で、お前が一番最初にやめるだろというのが先輩の評価でした。確かに挫折しそうになったときもありますが、そんなことを言われていたので、悔しくて、なにくそ、俺は一番になるんだ、人よりも早く正確に仕事を覚えるんだと気持ちでやりました。それから28年になりますが、同期で残っているのは私一人となっています。
  若い人を5人ほど付けられて、初めて現場を任されたのは入ってから3年目のことで、マンションの工事でした。普通だと8年か10年経たないと任されませんから、仕事が終わると監督さんのところに行って、素直な気持ちで、いろいろ聞きながら教えてもらうのが日課となりました。建物が完成したときの感激はなんともいえないものでした。そのマンションはまだ残っていて、たまたまその近くを通りかかったときには、当時の思いがよみがえってきて、初心に帰ります。
  それ以降、数多くの現場を担当してきましたが、一番印象に残るのはワールドカップの決勝戦が行われた横浜国際総合競技場の現場でした。長期にわたる工事で、その物量とスケールの大きさに驚くばかりでした。
私が大切にしているのは、自分の家、自分の住むところを作っているんだという気持ちで仕事をするということです。それが自分の仕事をしていく上での糧にもなるし、次の仕事にもつながってくると思っています。これからもこの気持ちを大切にして、誠心誠意を込めた、いい仕事をしていきたいと考えています。

一人前に育った若い人を見ると
  自分のこの以上にうれしくなる


高橋 継男さん(59歳) 株式会社 でんこう (札幌支部) 電気設備工事

 昭和35年に専門学校を出て現在の会社に入りましたから、もう45年になり、会社の職人の中では一番の年配者となってしまいました。当時は北見に本社があり、新入社員として先輩に連れて行かれた最初の現場が北見工大でした。
 会社には車は1台しかありませんでしたから、月賦で自分の自転車を購入して、30分くらいかけて山の上にある現場へ通いました。その頃の給料が6千円くらいで、その中から寮費に3千円、そして自転車代の返済が毎月千円、残るのが2千円という生活で、使えるのは風呂代とタバコ代くらいでした。
 電気設備工事も資材面などずいぶん変化しました。現在は配管も柔らかいパイプになっていますから入社1、2年である程度できるようになりますが、私が若かった頃は鉄の配管でした。それを自分で全部曲げながら鉄筋と鉄筋の間に入れて、コンクリートの中に這わしていかなければなりませんから、コンクリート打設の前日は10人がかりで夜中の1時、2時まで作業していました。曲げる角度も、配線が入りやすいように緩やかに同じ角度に曲げていくわけですから、心の中ではこれが職人技というのだと誇りに思いながら作業をしていました。
 45年を通じて、一番うれしい思いをするのは、自分の下でやっていた若い人が一人前になって頑張っているのを見るときです。「立派にやっているな」と、自分のこと以上にうれしくなります。それと同時に、現在はLANケーブルなどの新しい仕事が増えてきていますから、若い人と一緒に自分もこれからも勉強の連続だなと思っています。
●現場を訪ねて

(仮称)アルス琴似1・3新築工事(札幌支店)
雪に見舞われる真冬が工事の最盛期になるが
 チームワークを発揮していい建物を完成させよう

■工事場所  札幌市西区琴似1条3丁目
■工   期  平成15年8月〜平成16年9月
■発 注 者   東急不動産株式
■所   長  石黒 敏志

 平成15年も残りわずかとなった12月中旬、しばれる冬の防寒対策として厚着をして東京を飛び立ったのだが、札幌に着いてみると雪はなく、思っていたほど寒さは感じない。この冬は各地のスキー場も雪不足という報道がされていたが、札幌もまとまった雪はまだ一度しか降っていないという。いつもの師走とは様子が違うようだが、年が明けると本格的に降り出すだろうというのが、地元の方の話であった。

[建物概要]
構造規模
 RC造 地上15階
 塔屋1階
面   積
 敷地面積 1,734.79u
 建築面積  704.92u
 延床面積 5,844.40u
 基 準 階   298.84u
高  さ
 軒   高  43.900m
 最高高さ  47.150m
 基準階高   2.90m

 
▲公園と病院、マンション等に囲まれた現場である


▲石黒 敏志所長
 今回の『現場を訪ねて』は、札幌市西区琴似でマンションを建設している「(仮称)アルス琴似1‐3新築工事」の作業所である。  琴似(コトニ)はアイヌ語で「窪地になっている所」という意味だそうだが、琴似の町の成り立ちについて石黒敏志所長にお聞きする。

 石黒所長「町の北方に琴似発寒川が流れていますが、その川がつくった扇状地一帯には続縄文期の遺跡が残されていて、かなりの昔から人々が生活をしていたようです。そして、現在の琴似の原型になったのが、明治に入って北方警備と北海道開発のために設けられた屯田兵村といわれています。北海道全体で40近い屯田兵村があったそうですが、最初にできたのが琴似屯田兵村で、その兵屋を復元した1軒がそっくり昔の場所に残されていて、国指定史跡になっています。
 現在は地下鉄とJRで都心と結ばれており、札幌の西の拠点といわれるようにショッピングセンターや専門店、銀行、病院、公園などが数多く、生活環境が充実している地域になっています」

騒音・振動に細心の注意を払い工事を進行

「(仮称)アルス琴似1‐3新築工事」は地下鉄とJRの琴似駅の中間にあり、駅からそれぞれ徒歩5分という交通至便な立地の中に、地上15階建てと3階建ての高層棟と低層棟に分かれた、グレードの高い分譲マンション48戸の建設を行うものであるが、建物概要は次の通りとなっている。  工事を進めるに当たって細心の注意を払ったのが騒音と振動についてである。工事着工前から張り付いている技術員の島崎賢一さんは次のように話す。

▲島崎賢一技術員
 島崎技術員「ここの現場は正面と裏に病院、すぐ隣に精度を要する製品をつくっているビニール工場、更にマンションと公園にも囲まれているというのが特徴です。特に病院には入院患者さん、通院される方がいますし、CTなどの医療機器もあるわけですから、騒音や振動で迷惑がかかることがないように、工法の検討をはじめ作業時間の調整などを行う一方、皆にも無用な音や声を立てないようにしようということで進めてきました。工場の方も精密な機械があるということで杭工事、土工事の時には気にされていましたが、影響を与えることなく高層棟と低層棟双方の基礎工事を無事に終えることができました」
 現在は高層棟の躯体工事に入っているが、季節の方もこれから本格的な寒さを迎えることになる。この冬は雪は少ないのでしょうかという質問に、雪の多い冬になるだろうというのが作業所の予想である。
 現場を見させてもらうため事務所から外に出ると、やはり寒さが迫ってくる。
 現場は冬期養生の上屋が架けられているから、ドームの中で作業をしているような感じである。ジェットヒーターの熱のおかげで中の気温は10℃を超えているのではないだろうか。

雪に見舞われても万全の事前対策で大丈夫だ

冬期間における様々な工事を担当してきた古寺直樹主任から上屋について説明を受ける。


▲古寺直樹工事主任
 古寺工事主任「これまでも雪の多いとき、少ないときの工事を担当してきましたが、必ず上屋を仮設して工事をしてきました。上屋も予算をはじめ諸々の条件によって材料や仮設方法が違ってきますが、この現場の場合は寒中コンクリートの期間になりますから、3階までのコンクリート打設が終わると、次は6階までコンクリートが打てるように、この上屋を盛り替えていきます。そして、さらに8階までコンクリートが打てるように盛り替えるというように、これから3月まで上屋の設置と盛り替えに3回手間をかけることになります」
 作業所では大雪や吹雪になったときの対策は事前に織り込み済みであるが、通常でも厳しい工期であるから、雪が積もると除雪、排出などの余計な手間と時間と費用がかかることになる。

 古寺工事主任「除雪した雪の排出地の確保、基準以上の積雪に対する上屋対策など、考えられる限りの雪対策は事前にしていますが、それでも予想を超える大雪のために道路が混んでいて生コン車が来ないとか、様々なアクシデントが起こる可能性がありますから、それらを見越して、問題が起きたときには最小限に食い止める判断を素早く下すようにしています」
 雪問題もさることながら、現場で苦心しているのが、構造の変更等で着工が当初計画より1ヵ月遅れて、工期が実質12ヵ月になったことに加えて、「敷地一杯に建物を建てますから場所が取れないうえ、前面に高層棟、縦に長広い低層棟が奥にくるという形状的にも複雑な配置になっていますから、レッカーなどを入れるスペースもぎりぎりという状態です。だから、安全確保をしながら、いかに作業をスムーズに進めることができるかということに苦労しています」と島崎技術員は言う。  そんな中で、石黒所長が皆にいつも話しているのが、
 「工期がないからといってあわただしくやると、事故を起こしたり、何か抜けたものが出てくる可能性がある。だから、あせらず、あわてずに落ち着いてやろうよ」
 ということである。

事故なく喜んでもらえる建物を完成させよう

 安全衛生管理活動は安全衛生管理基本方針に沿って展開しているが、その基本方針は次の通りとなっている。

「作業所スローガン」
  チームワークとアイディアで
  みんなで築こう快適職場・安全職場

「重点管理項目」
  @墜落・転落災害の防止
  A飛来落下災害の防止
  B第三者災害の防止
  C重機災害の防止
  D火災災害の防止
  E倒壊・崩壊災害の防止
  F交通災害の防止
▲上屋が架けられた現場内、
   この上屋の設置と盛り替えを3回行うことになる


▲スペースに余裕がないのが悩みの種
「作業環境条件」
  ・東面の前面道路は狭く
  朝夕の交通量も多い。
  ・南面は児童公園があり
  子供の遊び場になっている。
  ・隣接建物に病院、精密機械を扱う工場、
  マンションがある。
  ・騒音、粉塵、振動に注意を特に払う、
  又は工法の選定必要。

「安全衛生の意識」
  ・東面の前面道路は狭く朝夕の交通量も多いので搬入車の多いときは
  警備員を配置する。(違法駐車の禁止及び近隣への配慮意識の向上)
  ・南面は児童公園があり子供の遊び場になっており、外部足場が公園上空まで
  突出するため、朝顔にて落下物養生を行うが常に落下させない意識を持たせる。
  ・騒音に対する近隣の注意があるので、無駄なクラクション、アイドリング、
  作業音の抑制意識。
「徹底事項」
  ・現場周辺での路上駐車の禁止徹底。
  ・KYK活動の徹底。
  ・各工種による安全点検の実施。(月1回以上)
  ・作業終了時の片付け、清掃の実施。

 チームワークを発揮しながら、先頭に立って皆を引っ張っている職長さんに、昼の打合せの後、しばらく残っていただいて話を聞く。

 吉村宏樹さん(椛蝟k工務店・とび工事)
  「外部足場を担当しています。敷地ぎりぎりの中で、足場もこれから20数段上がっていきますから、皆が仕事をしやすいように作業をしていきます。安全面で特に注意しているのは、子供たちが出入りして遊んでいる公園がすぐ隣にあって、建物がその公園と並ぶ形となりますから、絶対に物を落とさないようにということです」
 長南貴行さん(丸北三建工業梶E機械設備工事)
  「現在、躯体がらみの方のスリーブ工事をしていますが、開口部の養生と墜落・転落をしない ようにと注意しています」
 渡辺 力さん(渇。田工業・鉄筋工事)
  「2階の柱の組み立てに入っているところです。脚立作業が多いですから、基本を守って必ず適正使用をするようにと皆に言っています」
 内田和義さん(高松工業梶E圧接溶接工事)「鉄筋のガス圧接をしていますが、電動工具、ガス器具の事前点検を必ず行うこと、火傷をしないこと、養生をきちんとして火災は絶対に起こさないことを徹底させています。また、検査のある仕事ですから品質管理に細心の注意をして、いいものを確実に納期に間に合うようにと作業をしています」

 職長さんたちとはこれまでも一緒に仕事をしたことがあり、顔なじみという古寺主任は、「お互い遠慮せずに意見を出し合いながら進めていますが、これからも職長さんたちがまとまって皆を引っ張ってほしいと思います。そして、作業所としては働きやすい環境づくりとその維持、能率よく作業ができること、いい品質のものをつくるという3つを並立させながら進めていきたいと考えています」と言う。  工事は高層棟を終えた後の3月時点から低層棟に取り掛かるが、完成に向けて作業所では働く皆さんの気持ちを代表して、島崎技術員は次のように決意を述べる。  「事故がなく完成させて、エンドユーザーに満足していただく建物にするため、細かな納まりや気配りをしながら進めていきます」

昼の打合せ▲






















▲モデルルーム























 (追記)年が明けた平成16年1月中旬、暴風を伴った寒気団により北海道をはじめ東北、日本海側は大吹雪に見舞われた。札幌も地元の方の予想をはるかに超える大雪となり、新千歳空港の閉鎖をはじめ社会生活への影響を与えることとなった。
 これまでも同じような状況を経験してきた作業所の皆さん方だから、事前に準備していた対応策をフルに発揮して工事に当たっていることだろう。

 

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